箱根、強羅の神仙郷は、第二次世界大戦中から戦後にかけての混乱期に、岡田茂吉が手がけた庭園です。岡田が平和を希求し、終生の目標とした「地上天国」を表す理想郷として作られた神仙郷は、強羅の自然の特質を巧みにいかしつつ、独特な意匠と構成で他に類を見ません。さらに緻密な管理手法を継続することで、庭園の景色と眺望を現在も良好な状態で維持しています。
神仙郷の建築、作庭に関しては、歴史資料が残っていることから、その過程をつぶさに証明することができます。また園内にある美術館には多くの美術作品が蒐集されており、日本の美と文化の総合的な発信の場でもあります。令和年3年(2021)に国の名勝に指定されました。
このような点から神仙郷がもつ芸術上、鑑賞上の価値および学術上の価値は高いと言えます。


箱根 神仙郷

石楽園

神仙郷の中央に位置し、巨大な岩石群と渓流が織りなす石楽園は、岡田茂吉が強羅の土地を入手後最初に手がけた庭園で、岩も全て自身の指示で並べました。北側の竹庭や南側の神山荘前庭より一段標高が高く、箱根の山々や、はるか相模湾を取り込んだ開放感のある景観美を楽しめます。


石楽園

観山亭

昭和25年(1950)完成 ※内部非公開
室内から箱根の山々が望めることから命名されました。柿葺の数寄屋造りで、岡田が会談や、執筆の場として使用したとされます。強羅の土地を入手して最初に手がけた建物で、建設後、昭和を代表する数寄屋建築家の吉田五十八によって増築が行われました。


観山亭

神山荘

昭和19年(1944)入手 ※内部非公開
元は大正10年(1921)頃に建てられた、実業家・藤山雷太の別荘で、強羅に移り住んだ岡田の最初の住居。背後にそびえる神山の名から命名しました。
玄関の右手には食堂や応接室のある洋間、左手には日本間を配しています。屋根の一部は茅葺。建物全体が岩の上にあり、地形の高低差を利用した変化に富んだ構成が特徴で、平成13年(2001)に国の登録有形文化財に登録されました。


神山荘

山月庵

昭和25年(1950)完成 ※非公開
山月庵は日本の文化や建築美を世界に紹介するために、岡田が数寄屋大工の名匠、三代目木村清兵衛に託して建てた茶室。三畳の寄付、八畳の広間、草庵風の三畳中板の小間があり、小間の天井は赤松の丸太を使った格天井にするなど、各部に厳選した材料を使用しています。
屋根の形もそれぞれ異なり、檜皮葺、柿葺、茅葺の手法が施されています。前露地、外露地、内露地で構成された露地は、腰掛、中門、蹲踞、飛石、植栽などの要素によって格式高い空間が展開しています。


山月庵

苔庭

昭和27年(1952)完成
約130種類の苔を敷き詰め、そこに220を超えるモミジが配されています。冬の雪化粧、春には新緑の輝き、苔の緑とカエデの紅が映える秋と、季節によって多彩な表情を見せてくれますが、とくに秋の紅葉シーズンには多くの人が訪れる人気スポットです。


苔庭
苔庭

日光殿

昭和26年(1951)完成 ※内部非公開
観山亭を増築した吉田五十八によって設計された、1000人まで収容が可能な柿葺の建物。土地に高低差があり、西側は1層ですが、東側の約3割は地階と1階の2層となっています。日本の伝統芸能や演芸の上演を目的に建てられ、南側の芝庭では舞台が仮設されることもありました。


日光殿

龍頭の滝

昭和24年(1949)完成
大池の滝は日光殿の西側に位置し、神山荘前庭との地形の高低差を利用して造られています。
龍頭の滝の名称は、観山亭から流れてきた水が稲妻のように落ち、先端が二つに分かれ龍の髭のように落下することから名付けられました。


龍頭の滝

萩の道

昭和22年(1947)完成
萩の家の移築に合わせて作庭されました。蛇行する階段両脇の岩組の上に、ミヤギノハギとモミジが植えられ、紫と白の枝垂れる枝葉のトンネルをくぐるように演出されています。


萩の道

箱根美術館

昭和27年(1952)完成
鉄筋コンクリート造りの3階建てで、建物本体、内装、展示ケースに至るまで岡田の設計です。外観は淡い色の壁に青い屋根瓦の中国風で、1、2階が展示室、3階には日本間の来賓室があります。展示は縄文時代の土器から鎌倉・室町時代の六古窯の壺や甕、江戸時代に至るやきものが中心。


箱根美術館

竹庭

昭和26年(1951)完成
美術館本館から別館へと続く園路と階段の両脇に孟宗竹を植えた竹庭は、一か所にまとまって生えていたり、飛び飛びに生えていたり、変化をつけています。中国風の趣を醸し出し、同じく中国風の外観の美術館本館と一体となっています。


竹庭

真和亭

平成2年(1990)完成
苔庭に面して建つ茶室、真和亭は喫茶が可能な休憩所。
四季折々に変化する苔庭の景色を眺めながら、季節の和菓子と、自然農法で栽培された茶葉を使った抹茶が楽しめます(有料)。


真和亭

神仙郷建設の経緯


神仙郷のある強羅の地
箱根は古くからの温泉地で、明治・大正時代から皇族や実業家の別荘、ホテルや旅館が建設されてきました。奥箱根にある強羅は明治45年に別荘の分譲が始まり、大正3年(1914)には強羅公園が開園。さらに大正8年(1919)に箱根登山鉄道が開通し、東京からのアクセスがよくなったことで箱根の代表的な別荘地となりました。

自らが指揮した神仙郷の造営
神仙郷は細部に至るまで、岡田茂吉自身の構想によっています。岡田は箱根の庭師である勝俣芳太郎と、全国から結集した建設奉仕隊の信者に対し、地形の整備、園路の決定、池泉のデザイン、建物の配置から、樹木や草花に至るまで指示して造り上げました。岡田は作庭に関しての専門家ではありませんでしたが、その大胆な景観構成と細部に至るまで配慮された空間は、まさに岡田スタイルの造園術といえます。
強羅は岩石の多い場所ですが観山亭の周りはことさら多く、巨岩が積み重なっていました。岡田はこの岩石と樹木、草花の配置を思うがままに指示し、石楽園を造っていきました。これについて岡田は「夫々の配置や岩組をなしつつ、昔からの庭園としての約束を破り、形に囚われず、全然新しい形式で造ったのである。樹木にしてもそれに相応すべく、色々の種類を集めてよく調和させ、滝や渓流にしても、出来るだけ自然の味を出しながら、山水の美と庭園の美をタイアップさせて、自然の芸術の高さと好さとを充分出そうとしたのである」と述べています。自然の一部を切り取っただけの庭園ではなく、自然の美と人工の美を調和させ、統一させた小宇宙を形成することを目指したのです。


神仙郷建設の経緯
桜の季節の強羅公園内の西洋庭園。園内中央に円形の池があり、北東の方向に明星ヶ岳を望む。
神仙郷建設の経緯
宗教活動だけでなく、教育、芸術などにも力を注いだ岡田茂吉。芸術活動を推し進め、優れた美術品の蒐集に努め、「美術の名品は個人が独占するものではなく、作者の高い芸術性に多くの人が接し、美意識を高めて品性の向上を図り、文化の発展に寄与すべきである」との想いから、箱根美術館を建造した。
神仙郷建設の経緯
かつての強羅全景。縦に走るケーブルカーの軌道の左側中幅、白く見えるところが強羅公園。下の方には別荘と旅館が立ち並んでいる。
神仙郷建設の経緯
昭和27年(1952)、建設中の箱根美術館本館。建設奉仕隊の協力のもと、着工から8か月というスピードで完成した。
神仙郷建設の経緯
龍頭の滝の岩組み作業中。右上に観山亭の一部が見える。
神仙郷建設の経緯
昭和24年(1949)、第一期完成時の日光殿。当時は建設奉仕隊の宿泊所として使われた。
神仙郷建設の経緯
全国から集まった建設奉仕隊による作業。神仙郷は岡田と専門家と建設奉仕隊の三者一体で建設が進められた。
神仙郷建設の経緯
作家の舟橋清一、実業家の小林一三を案内する岡田。



INFORMATION


箱根美術館

〒250-0408 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
TEL 0460-82-2623(代表電話)

箱根美術館のホームページはこちらから


開館時間

4月~11月 9:30-16:30(最終入館16:00まで)
12月~3月 9:30-16:00(最終入館15:30まで)
茶室 真和亭 開席時間 10:00-15:30


休館日

木曜日(祝休日の場合は開館)11月は無休
年末年始
展示替え日(※最新の情報は箱根美術館カレンダーをご確認ください)


車椅子をご利用のお客様へのご案内

当館はバリアフリーになっておりません。
車椅子をご用意しておりますが、庭園内は階段が多く、本館入口にも階段があり、エレベーターはありません。
介助なく車椅子でご覧いただけません。詳しくは当館までお問い合わせください。

観覧料

一般    1,300円(1,200円)
高大生   600円(500円)
中学生以下 無料
シニア割引 1,100円
障害者割引 800円

※( )内は10名以上の団体料金 ※各種割引の併用はできません。
※ 高大生の方は入館の際、身分を証明できるものをご提示ください。
※ シニア割引の適用は65歳以上となります。(証明できるものをご提示ください)
※ 障害者割引の適用は障害のある方とその付添者1名となります。(証明できるものをご提示ください)


お得なオンラインチケットをご用意しております。

https://www.e-tix.jp/moaart-hakone/



ACCESS


JR小田原駅よりお越しの方へ

(所要時間約1時間)


お車でお越しの方へ

東京方面より(所要時間約2時間)
静岡方面より(所要時間約1時間半)


駐車場について

利用時間 9:00〜17:00
料金   無料